抗がん剤をやめるタイミングや、いつまでやるかなどは、苦しむ前に知っておくほうがいい
基本データ
13万部突破のロングセラー『「平穏死」10の条件』の著者が、がんと闘うすべての人とその家族へと綴った、患者目線の生き方指南!
「抗がん剤の奏効率、五年生存率、余命宣告、腫瘍マーカーの数値に振り回されるな! 」
話題のベストセラー医師による、渾身の書き下ろし! 多くのがん患者を在宅医療で支えている町医者だから言える、大病院が教えない抗がん剤治療の明と暗。延命と縮命の見極め方とは?
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書名 | 抗がん剤 10の「やめどき」~あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか? |
著者 | 長尾和宏(医師) |
出版社 | ブックマン社 |
発売日 | 2013年9月18日 |
- 患者氏名:***
- 種類:***
- 発症年齢:***
- 病歴概要:***
- タグ・ジャンル
最初にお読みください
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おススメ書籍の使い方 | がんケアネット以下の文章には、「末期」・「死」などが含まれている場合があります。
挑発的なタイトルだが、抗がん剤で苦しむ前に読んでおくべき内容だ
抗がん剤を否定するのではなく「抗がん剤をやめるという選択肢がある」ことを、提示した書籍
抗がん剤は、その人によって様々だが副作用がある。抗がん剤を開始する前に、あるいはがんに対する治療を開始する前に、抗がん剤のやめどきの一例を本著で知っておくことは必要だろう。いざ治療が始まれば、本人も周辺も、日々の副作用に目を奪われ、大きな視点で見ることができないからだ。
「抗がん剤 10の「やめどき」~あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか? 」というタイトルの後半が少しセンセーショナルだが、極端にあおっている部分はない。
最終的に判断するのは自分であり、家族であり、医者ではない。副作用に苦しむ前に、このような考え方もあると知っておくだけで、いざ苦しみが始まったときでも判断の一助になると思う。
前半では、かなり詳細な物語形式で、胃がんとなった男性の告知から最後までを描きながら、抗がん剤のやめどきを説明。後半は、物語中で示した10個のやめどきをそれぞれ詳しく説明していく。わかりやすく読みやすい。
最初から抗がん剤を否定するのではない。「抗がん剤をやめるという選択肢がある」ことを、提示した書籍。よって、この書籍を読んで抗がん剤に否定的になる、すぐに中止するなどは本書の意図に反する。
こんな方に、このようなときに「抗がん剤 10の「やめどき」」を読んでほしい
- 抗がん剤を始める前の患者本人や家族・身内の方々に
- 抗がん剤の副作用で悩む患者本人や家族・身内の方々に
抗がん剤をやる、やらない、ではなく「やめどき」を知れ:本書のおススメ抜粋
下線は私自身によるものです。
再発は抗がん剤のやめどきの一つ
再発は、ご本人にとっては、抗がん剤のやめどきを考える一つのタイミングかもしれません。再発したことをご本人に伝えなければ、信夫さんはやめどきを考えることさえできなくなってしまう。そうは思いませんか。
引用:p155-
身体だけでなく心も悲鳴をあげたとき
がん患者さんの実に四割近い人がうつの状態を経験するというデータもある。あまりにも不眠や、やる気のなさを感じたときは、副作用ではなくて、うつ状態を疑ったほうがいい。早めに、心療内科やしかるべきカウンセリングに足を運ぶことも一考したい。これも大切な、抗がん剤のやめどきである。
(中略)
がん治療で身体が悲鳴を上げれば、心だって悲鳴を上げて当然だ。ましてや鈴木さんも言っていたように、「再発」「転移」という言葉は、それまで頑張ってきた心の糸をプッンと切ってしまう可能性もあるのだ。日本ではまだまだ、がん患者さんの心のケアに関してまで、構う余裕がない大病院が多い。身体を治すことばかりに専念して、心を診ない。
引用:p163-164
がん治療において、ドタキャンは恥ずべき行為ではない
こうして患者の想いと医者の想いが食い違うことは現実によくある。残念ながら、第三者的な相談者はあまりいない。たとえセカンドオピニオンに出向いたにせよ、最終的には自己決定しかない。
患者さんは、たいてい複数の家族に相談をする。すると配偶者、子ども、兄弟の意見が食い違い、家族間の調整が必要な場合がよくあるようだ。それでも最終決定をしなければならない。家族全員の最終調整の結果が、抗がん剤の開始当日まで揺れ動くことはときどき経験する。
昨夜まで「やる」と言っていたのに、朝になったら「やらない」に変更されたケースも何度も経験してきた。反対に「やらない」はずが、「やる」に変わることもたまにある。そうした”揺らぎ”に根気よく寄り添うことも、医者の仕事である。
「この家族、まだ揺れ動くかもしれないな」なんて思いながらも、「わかりました」と一応対応する。これが大病院の医者なら心は穏やかではないはずだ。医者も人の子。せっかく準備したからには、その抗がん剤治療をやりたいのが本音だろう。
しかし、私はドタキャンも、朝令暮改も、患者さんご本人の意思ならば可能な限り尊重したい。もちろん、少しだけやって合わないのでやめる、という選択肢もあるのだが、潔く最初からやらないという決断も悪くないと思う。
引用:p230-231
やめどきは、医者だってよくわからない
一方、抗がん剤治療において、治療のやめどきは医学の教科書にちゃんと書かれている。患者さんの全身状態が悪化したとき等、具体的な記述がある。しかし、薬が効かなくなったときのことは書かれていない。
一口に「効かない」と言っても、どの程度をもって効かないと判断するのかが、難しいためだ。現実には、最期まで抗がん剤がダラダラと続く場合が少なくない。その場合はもちろん延命効果がないばかりか、命を締めている。
「そんな馬鹿な」と思われる方が多いだろうが、傍観者でいるときと当事者になった場合とでは、人間が取る行動は別ものなのだ。
鈴木信夫さんも、抗がん剤ができなくなるまで続けようという主治医の言葉に相当悩まれた。ここまでやり続けたんだから、今さらあとには引けない――という感情も出てくる。しかし、それは無意味な意地を張っているだけかもしれない。
というわけで、「抗がん剤のやめどき」その5は、「腫瘍マーカーは下がらないができるところまでやろう」と主治医が言ったときだ。言葉の真意を推し量るのも、患者の仕事かもしれない。
主治医との話し合いは重要だが、最後に決めるのは自分である。自己決定という言葉を噛みしめよう。
引用:p138
治療も引き際が肝心
人生、何につけても引き際、が一番難しい。
(中略)
そう、抗がん剤治療も引き際が一番難しいのだ。それを一番よく知り、決断できるのは患者さんご本人しかいない。
引用:p269
やめどきのシュミレーションはやっておくべき
腹の探り合いもできずに、医師と患者の両方がお互いに「抗がん剤のやめどきは、相手が切り出してくれるに違いない」と思いながら、最期の日を迎えることが少なくない。
患者さんがそれでもいい、と最期まで腹を括っていたというのなら、それでいい。
しかし「ああ、やっぱりもう少し早くやめておけばよかったな」と後悔するのであれば、本書を活用して、予め「抗がん剤のやめどき」をシミュレーションしておくべきであろう。
引用:p274
やる、やらない、ではなく「やめどき」が大切
抗がん剤はやる、やらないではないのです。大切なのは、あくまでも、「やめどき」なのです。
いつ、やめるか? その答えは、あなたの心の中にあります。ご家族とも十分に話し合って、悔いのない答えを模索してほしいと願います。
引用:p279
この書籍の目次
はじめに
第一章 町医者が見た あるがん患者の物語
第二章 抗がん剤10の「やめどき」
1 迷った挙句、最初からやらない
2 抗がん剤開始から二週間後
3 体重の減少
4 セカンドラインを勧められたとき
5 「腫瘍マーカーは下がらないが、できるところまで抗がん剤をやろう」と主治医が言ったとき
6 それでもがんが再発したとき
7 うつ状態が疑われるとき
8 一回治療を休んだら楽になったとき
9 サードラインを勧められたとき
10 死ぬときまで
おわりに