公開日:2022年7月13日 | 最終更新日:2023年12月19日

80代に近い高齢末期がん患者の緻密な闘病記録

基本データ

膵臓がんを、あきらめない!
経済学者が、ステージ4bの膵臓がんと言われて1年半が経過。
果たしてがんとの共存は可能か?
根治不能のがんになった人と、家族のための希望の書。

「これほど元気な末期の膵臓がん患者を私は見たことがない」
―――垣添忠生氏(国立がんセンター 名誉総長)推薦!

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書名末期がんでも元気に生きる: 「がんとの共存」を目指して
著者石 弘光(患者本人)
出版社ブックマン社
発売日2017年10月22日
  • 患者氏名:石 弘光(1937年生まれ)
  • 種類:膵臓がん ステージⅣb
  • 発症年齢:79歳頃
  • 自覚症状:自覚症状は特になかった。2010年1月:前立腺がんの全摘手術。術後3年まで年2回、その後年1回の検査を続けていた。2016年6月16日:MRI検査(2011年に膵臓の嚢胞が見つかったため、毎年、定期検査を受けていた)。MRI検査の結果、7月に検査入院。すい臓がん ステージⅣbと診断された。
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以下の文章には、「末期」・「死」などが含まれている場合があります。

おススメポイント

経済学者によるしっかりとした緻密な記録

2016年6月の検査、翌月の精密検査でグレードⅣbの膵臓がんと診断された著者の1年2ヶ月間の詳細な治療内容。また、高齢者で末期がんの自身のがんへの心構えを記す。

経済学者として多くの著作がある著者だけに、文体は確固たるものがあると共に参考文献の引用などもしっかり記述されている。80代に近い年齢の末期がんの闘病記録として非常に参考になる。※2018年8月25日逝去

巻末の対談・結びにかえて、いずれも秀逸な内容

本文だけでなく、巻末補論 「高齢者とがん 」―垣添忠生氏(国立がんセンター名誉総長)との対談、毎日が自然体――妻からの一言 石眞美子、結び。さらには巻末に参考文献もあり充実した内容だ。

垣添氏との対談では、著者と垣添氏双方のがんに対する心構えや考えが紹介されている。

X-dayに向けて

(中略)自宅で死を迎える気はない。私の祖父母はいずれも自宅で息を引き取り、孫である私はそれにより人間の死を幼いころに身近に体験したことがある。だが自宅はあくまで生を営む場所であり、死を持ち込むのは避けるべきだと考えている。まして孫との別れを自宅で告げたくはない

「高齢者とがん」-垣添忠生氏との対談から

(中略)一般的にがんの告知を受けますと、その衝撃から頭が真っ白になると言います。日本国民の三人に一人はがんで亡くなると言われ、癌は身近な病気となってきたのですが、やはり、その衝撃は大きいようです。医師から説明を聞いても、一切、頭に入らないそうです。

一晩明けると、「昨日の告知は嘘だったのではないだろうか」「夢を見ていたのではないだろうか」などと考えるようになります。事実の拒絶と受け入れを何度も繰り返し、およそ三週間経って、「まぁ仕方がないな」と受け入れます。その後、車のギアを切り替えるようにして、「今後、自分はどのように生きるべきか」「家族には、どのように対応すればよいのか」などと考え、ある意味「生き直し」が始まります。

「高齢者とがん」-垣添忠生氏との対談から

対談相手である垣添忠生氏の書評もご一読ください。

また、「結びに代えて」では、高齢者のがんに対する心構えが5つに大別されて紹介。

1.膵臓がん・ステージⅣbと診断が下され、これを聞いただけで絶望するかもしれないが、形だけの病状に脅かされるな。
2.体力・気力を充実させておく
3.苦しいがん治療は一人ではできない。健常な頃から見守ってくれる家族など、高齢者になる前から大事に育てておく。
4.主治医との信頼関係
5.日常的に手軽にできる趣味を持ち、QOLを高くして、癌に罹患していても人生を楽しむ。

結びに代えてから(※2017年8月9日記)

このような方、このような時に

  • 高齢者で末期がんの方
  • 高齢を迎える方で、がんに対する心構えや準備が知りたい
  • 膵臓がん末期の治療の記録を知りたい

この書籍の目次

目次
はじめに

第1章 晴天の霹靂 ー膵嚢胞が、突然がん化した

1発病とその経過
2検査入院
3結果の説明とセカンド・オピニオン
4抗がん剤治療に備えて

第2章 高齢者が、がん・死に直面したとき ー働き盛りの世代とは異なる

1末期がんをどう受け止めたか
2高齢者とがん
3死生観と人生幕引きの選択
4がんと仲よく共存したい

第3章 「がんとの共存」への第一歩 ー抗がん剤治療始まる

1抗がん剤とその副作用
2抗がん剤治療の試練
3抗がん剤治療と共に暮らす日々
4劇的な効果

第4章 治療の第2弾 ーがん生活とQOL(生活の質)の維持

1抗がん剤との生涯の付き合い
2がん治療・生活とQOL維持
3抗がん剤の副作用その後
4 定期検査とその結果

第5章 果たして「がんとの共存」は可能か ー「青い鳥」を求めてー

1「がんとの共存」の条件
2セカンドラインの治療
3がん患者として1年!
4「天寿がん」を願って

巻末補論 「高齢者とがん 」―垣添忠生氏との対談
毎日が自然体――妻からの一言 石眞美子
結びに代えて
参考文献

各章の概要

第1章 晴天の霹靂 ー 膵嚢胞が、突然がん化した

2016年7月11日:MRI検査の結果を受けて、3泊4日で検査入院。すい臓がん、ステージⅣbと診断される。セカンドオピニオンも行ったが、最初の病院での化学療法(アブラキサン・ゲムシタビン):週一回投与を3週間、1週間休む=1クールでこれを6クールと決まった。

第2章 高齢者が、がん・死に直面した時 ー 働き盛りの世代とは異なる

ここまで充実した人生であり、子供達も育て上げたと達観している著者。いつかは死ぬというのが、1年か2年のスパンとなってきただけ。遺産に関する終活も終えた。

第3章「がんとの共存」への第一歩 ー 抗がん剤治療始まる

抗がん剤開始、副作用、食事、運動をそれぞれ紹介。2016年7月24日:入院。7月25日:抗がん剤開始。その後、8月8日から通院で化学療法。湿疹・身体の痒みに悩まされ、後半からだるさ・倦怠感に苦しむ。9月30日でまず終了。腫瘍は縮小した(本章の最後に副作用が詳細にまとめられている)。

抗がん剤に対する考え方

抗がん剤を投与しなければ、私の寿命は半年間くらいで尽きていたかもしれない。抗がん剤はがんを根治できず単に延命を図るだけだといわれるが、QOLをある水準に維持でき日常的に正常な生活が営めるのなら、延命という限定的な役割で十分に存在価値はあると思う。

p140から

第4章 治療の第2弾 ー がん生活とQOL(生活の質)の維持

11月に化学療法第2弾。副作用は長引いているが、生活水準を維持し延命してくれるなら抗がん剤の存在意義はあると考え、教え子達との交流、スキー、囲碁などでQOLを維持したことを紹介。しかし、CT検査、腫瘍マーカーなどで、気になる点が出てくる。

第5章 果たして「がんとの共存」は可能か ー「青い鳥」を求めて

抗がん剤は、がんを完治させるのでは無く、余命を延ばすもの。がんの活動を休ませる化学療法を行い、その後は闘うのでは無く共存できればと思う。がん告知から1年経過し、祝う。毎月1回の旅行。

高齢者の末期がんの緻密な記録 是非お読みください