公開日:2019年9月7日 | 最終更新日:2023年12月2日

これまでに食道がん化学療法(FP療法)を2回終えた。抗がん剤と言えば、吐き気や倦怠感だが、私の場合、抗がん剤をやっているときも終わったときも、ほとんどなかった。しかしそれは結果論であり、抗がん剤中は、いつ吐き気が襲ってくるのだろうかと不安に思っていた。医師や看護師にこの点を聞くと、すぐに「人それぞれですからねぇ」という言葉に終始した。わかってはいるのだが、大丈夫ですよとか、最終日くらいですかねぇ、などの一言が欲しかった。

「副作用は人それぞれ」は、帰り際に「お大事に」と言われるのと似ている?

「副作用は、人それぞれ」と即答しないで

「最近の吐き気止めは、本当に良くなりましたから」という言葉を、抗がん剤を始める前に主治医から何度か聞いた。そう言われても、それまで吐き気止めの薬など世話になったことがないので想像できない。

実際に、点滴に吐き気止めが入っている状態で抗がん剤を開始したが、吐き気はお陰様でほとんどなかった。しかし、こちらは素人である。「初日の今日は来なかったが、身体の中で抗がん剤が蓄積された明日くらいに来るかもしれないと思う」のが当然だ。

ところが翌日も吐き気は来ない。そこで、「吐き気は今日は来ますかねぇ」と主治医に聞く。「いや、副作用だけは人それぞれなので、わからないですよ」と主治医は即答される。看護師さんも同じことを言う。

吐き気は来ないと言われて実際は気持ち悪くなっても、クレームなど言わない

こちらは素人である。「明日くらい気持ち悪くなりますかねぇ」と聞けば、「今日は大丈夫だったので明日も大丈夫と思います」くらいを言ってほしい。もちろん、明日に吐き気が来てもそれはそれで仕方がない。クレームなど言わない。

誰しも吐き気など来てほしくない。誰しも抗がん剤などしたくない。それでもやっている。藁をもすがる気持ちでやっているのだ。だからこそ、前向きな言葉が欲しい。権威があって経験も豊富で修羅場をくぐっている医師や看護師だからこその言葉があるはず。

もし、実際に吐き気が来たら(現実として吐き気は来た)、「今日を乗り切ったら明日は良くなりますよ」くらいを言ってほしい。明日、良くならなくてもクレームなど言わないし、怒ったりもしない。

医療そのものこそ、すべて「人それぞれ」のはず

何度も「人それぞれ」と医療関係者から言われると、結局、副作用だけでなく、医療はすべてにおいて「人それぞれ」でしょう、と言いたくなる。しかし、もし抗がん剤を終えて、再発転移したときに、「抗がん剤も人それぞれですから」などと言われたら、誰もが怒るだろう。手術が失敗に終わったあとに「手術も人それぞれですから」なんて言われたら、怒り狂うだろう。

百歩譲って「副作用は人によって違いが大きく、容易には明確な答えが出ない」のであったら、もう少し「悩むふり」をしてから「人それぞれ」と言ってほしい。即答過ぎるのだ。

「お大事に」も同じく、使いやすい言葉

同じことが、診察が終わったあと、薬局で薬をもらったあと、会計を済ませたあとに聞く「お大事に」。言わないよりはいいかもしれないが、患者の顔を見ず機械的に「お大事に」とよく言われる。これも即答過ぎるのだ。

天気が悪い日なら「お気をつけて」、きつい治療を終えたあとなら「おつかれさまでした」と言うだけで相手は気分が良くなるはず。

「副作用は、人それぞれ」と言われても、受け止め方も「人それぞれ」

さて、「今まで書いてきた文章そのものがクレームではないか」と言われそうだ。そうかもしれない。ただ、わかっていただきたいことは「副作用は人それぞれ」と言うことこそ、受け止め方は「人それぞれ」ということだ。

「副作用は人それぞれですから」と言われて、「そうですか」と納得する人もいれば、「で、結局、どうなるの」と不安げに思う人もいる。そして、私のように「また、その一言か。なんか気の利いたことを言ってくれよ」と思う人もいるということだ。

駄文を重ね過ぎたが、伝えたかっとことに同意される方は少なからず存在すると思う。

医師も看護師も人それぞれ。だからこそ、その人なりの答え方を考えてもらえればと思う。