公開日:2019年6月20日 | 最終更新日:2023年8月3日

「がんの世界」の言葉は特別だ。予備知識なしで「標準治療です」と言われてわかる人はほとんどいない。ましてや扁平上皮癌・粘膜下層など、遠い世界の話だ。しかしこちらの世界では日常会話になる。事前にネットで調べてもキリが無いので診察中に不明な語句をメモして、あとでネットで調べることをおススメする。

標準治療? 浸潤? 粘膜下層? 何のこと?

標準治療よりも特別治療は無いのかな、なんて思うのが普通

今でこそ私も「がんの世界」で使われる言葉に慣れた。しかし、告知から3、4ヶ月の間は、主治医がせつめいした言葉の2割程度しか、理解できなかった。今までの人生の中で「標準治療」など聞いたこともないのだから。

例えば、あなたが胃痛になった時、「あなたの胃の痛みは標準治療で治療します」と突然、医師に言われたらどう思うだろうか。「えっ、標準治療とは、通常の治療のこと? 早く治る特別な治療でもあるのか。そちらの方が費用が高いのか」なんて思うのではないだろうか。

ところが「がんの世界」では標準治療という言葉が頻繁に出てくる。標準治療こそが王道で、それ以外の治療は、ある意味、格下で代替療法や民間療法と呼ばれ、エビデンスがない(科学的根拠がない)治療法であり、邪魔者扱いになっている(はずだ)。

さて、駄文が過ぎた。ここらあたりで、変だな、そんなのは言われても直感的にはわからない、と思った例を出す。

  • 標準治療:(言われて即座に思ったこと)標準や平均的な治療じゃなくて特別治療があるのならそちらがいいのだが。

    (注:標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療:標準治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]から)
  • 浸潤(しんじゅん):がんの浸潤? 侵して潤う、いや違う、浸み込んで潤う? 何のこと? 侵入ではダメなのか?

    (注:浸潤とは、がんが周囲に染み出るように広がっていくこと:浸潤:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]から)
  • がんが粘膜下層にとどまって(T1b)、リンパ節転移がない(N0)。よってステージⅠです:主治医に言われて数ヶ月経って、じっくりと調べてやっと理解したもの。理解した頃には内視鏡で食道がんを切除して、抗がん剤も放射線もほぼやり終えていた。基本的に事後の理解は最善とは言えない。

    (注:食道がんのステージを分類するもの。同じT1bでもN1(第一群リンパ節のみに転移がある)であればステージⅡになる(はずだ。今でもまだ完全に理解していない)。食道がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]から)
  • ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術):「内視鏡的」の「的」って何よそれ、とまず聞いて思った。ESDのEがEndoscopic、いわゆる形容詞であり、まさに直訳すれば「内視鏡的」。そのままである。

こんな感じで、がんの場合、使う言葉が海外からの直訳が多いような気がするが、日常の医療でも医師の間では直訳の医療業界専門用語があるのだろう。しかし、がんの場合は、これらの業界の専門語を患者にも容易に示すような感がある。そりゃわかりにくさに拍車がかかるのは当然だ。

すべて患者にわかりやすい言葉で、とまでは言わないが、わかりやすい言葉に置き換える努力を見せてほしいと思うのは私だけだろうか。まぁ、私の専門分野である法律も金融も専門用語ばかりだが、わかりやすく他の言葉を使ってお客様には説明している。そうでなければコミュニケーションが成立しない。

がんの世界も、専門用語の表現方法はもっと考慮すべきだ。袋小路に入ってしまう可能性がかなり高いからだ。