公開日:2019年6月3日 | 最終更新日:2023年10月4日

セカンドオピニオンを行う大学病院へ。最初に32,400円を窓口で支払う。腫瘍内科は、きれいな別館のような病棟にあった。そこで、5分ほど待っていたら呼び出された。

はじめてのセカンドオピニオン

想像通りの中堅どころの医師が担当だった

今日は2019年6月3日(月曜)で、告知から87日で約3ヶ月が経過した。

午前は仕事、その後一度帰宅し、午後にセカンドオピニオン先の病院へ車で移動。はじめて行くため、駐車場の入り方がわかりにくかったが、それ以外はスムーズに。

料金支払いの窓口で、3万円と消費税8%の合計32,400円を支払う。セカンドオピニオンの診療科は「腫瘍内科」。本館は古かったが腫瘍内科のある別館は綺麗だった。ほとんど人がいない空間で5分ほど待ち、名前を呼ばれた。

部屋に入ると、30代後半か40代初めくらいの中堅どころ、今、現場で最前線であろう医師が待っていた。

事前の相談内容からイラストや図を書いてくれていた

世間話などなく、すぐに本題に入った。事前に私の相談資料に基づき、わかりやすいイラストや図表を書いてくれていた。そこには、

  • T1b(ステージⅠ)/N0(転移無し)/M0(遠隔転移無し)という私の基本病状
  • 粘膜下層深層(SM2)であること。この場合、リンパ節転移の頻度は40%
  • 脈管侵襲がly3:リンパ管にがんが侵入している。0~3までの段階で私はly3なので度合いが高い
  • 食道はリンパの流れが速く、リンパ節転移しやすい
  • 内視鏡治療だけではリンパ節への治療はできない
  • よって、「外科手術」あるいは「化学放射線療法」が治療方法となる
  • 化学療法は、5FUとシスプラチン。放射線療法は40グレイ。それぞれの副作用など

このような感じで、所見書に2枚に渡って書かれていた。

セカンドオピニオンでの病状についての所見書(イラスト・メモ)
所見書の一部

脈管侵襲ly3というのをはじめて知る

ここで、脈管侵襲ly3という初めて見る語句があった。結論から言えば、リンパ管に侵入している度合いが高く、再発しやすいということだ。正直言ってため息が出た。「主治医よ、教えてくれよ、こういう大切なこと」という感じだ。

切除したがんの顕微鏡検査で、くわしいがんの広がりの検査項目があるのですが、そのなかに、脈管侵襲というのがあります(記号は、lyとかvと書かれています)。

これは、がん細胞が、近くのリンパ管や血管のなかに入り込んでいるかどうかのことです。つまり、リンパ管にがんが侵入していなければly0、侵入していれば、その程度に応じてly1、ly2、ly3となります。

同様に、血管にがんが侵入していなければv0となりますし、侵入していれば、その程度に応じてv1、v2、v3となります。

たとえば、ly0、v0(脈管侵襲なし)であれば、再発しにくいといえます。

再発しにくい「がん」の特徴5つ – がん情報チャンネル

食道がんステージⅠでは外科手術・化学放射線療法どちらがいいのかをセカンドオピニオンで聞いた

以下は、2019年6月の古い情報となります。

再度ここで、「セカンドオピニオンまでの日々 | がんケアネット」での申込書内容の一部を掲載する。

今回のセカンドオピニオンで相談したい事項・特に伝えたい事項・年齢的に手術を勧められております。標準治療でもそう書かれていることは理解しており、また放射線治療後に手術をした場合、手術がしにくいと言われ、なんとなく手術を第一に考えておりますが、ここ数週間で結論を出す予定です。以下、ご相談したい内容です。
 
・一般論として化学放射線療法単独でも同程度の結果が出るとありますが、手術の方が優位な理由は何でしょうか。罹病部位を直接見るため、どこに癌が進行しているか、リンパ節への転移の有無が明確になる、という利点は理解しておりますが、他にはありますでしょうか。

・手術に耐えうる体力がないという理由が化学放射線療法を行う理由と理解しております(重複になりますが手術が化学放射線療法より優位と理解)。手術が大がかりで身体への負担が大きい、食道を全摘するといったデメリットをふまえても化学放射線療法より手術が優位、という理由は何でしょうか。放射線照射後の手術は合併症が起きやすいというデメリットは理解しております。
 
・色々書いておりますが、体力さえあれば手術の方が化学放射線療法より優位な結果が出るという理由が不明と言うことになります。この点をご指導いただきたいと存じます。

この当時の私なりに理解している点・疑問点は次の通り。特に3つめが最大の疑問だった。

  • 標準治療では、外科手術が第一と言われている。高齢者でもないので、外科手術ができると聞いている。
  • しかし、ステージⅠでの外科手術と化学放射線療法では、どちらも有効であるという試験結果が出た。どちらをやってもいいということか。
  • 素人目には、食道全摘という大きなデメリットがある。化学放射線療法も同程度に有効という結果が出ている。それなのになぜ外科手術をすすめるのか?

以下のJCOG0502という試験結果で、従来は、外科手術単独の選択肢しかなかったのが、化学放射線療法も選択肢の一つとして浮上した。換言すれば、この試験結果がなければ、あるいはこの試験結果を知らなければ、迷うことなく、私は外科手術をやっていたはずだ。

試験の結果、化学放射線療法においても手術療法と同程度の5年生存割合が示され、化学放射線療法を選択した患者さんの80%は、食道を温存しつつ、5年以上生存することが可能でした。

臨床病期I期食道扁平上皮がんにおける標準治療を検証 化学放射線療法が手術療法に劣らない有効性を示し、 新たな治療選択肢に | 国立がん研究センター 中央病院から

試験の結果、化学放射線療法においても手術療法と同程度の5年生存割合が示され、化学放射線療法を選択した患者さんの80%は、食道を温存しつつ、5年以上生存することが可能でした。

臨床病期I期食道扁平上皮がんにおける標準治療を検証 化学放射線療法が手術療法に劣らない有効性を示し、 新たな治療選択肢に | 国立がん研究センター 中央病院 から

StageⅠ食道癌に対する食道切除と根治的化学放射線療法はともに有効性、安全性は良好で、根治的化学放射線療法における全生存期間は食道切除に劣らないことを示した。以上より根治的化学放射線療法はStageⅠ食道癌に対する標準治療の一つと考えられる。

#7 GI cancer-net 海外学会速報レポート 2019年1月サンフランシスコから

「どちらの治療法でもいいです。決めるのはあなたです。」と医師から言われた。

結論として、セカンドオピニオンの医師からは「外科手術・化学放射線療法どちらでも有効。決めるのはあなた、です」と言われた。

もちろん、この結論に至るまで、いろいろと教えてもらった。「再発する人は、一年以内には再発します」という話がセカンドオピニオンの場で聞いたことは、かなり強烈だった。

いろいろと話を聞いた結果がこれだ。JCOG0502の速報だったと思うが、これが出たのが2019年1月。これがなかったら化学放射線療法は選択肢になかった。従来は外科手術を、つい最近に化学放射線療法も同程度に有効だとなった。決めるのはあなたです、ということだ。

セカンドオピニオンに不満な点は皆無だった。それよりも、通常の診察では聞けないリアルな話が聞けて良かった。

所見書をもらってセカンドオピニオンは終わった。そして決断した。

時間はあっという間に経過し、所見書をもらって、セカンドオピニオンは終わった(しかし、今思えば、セカンドオピニオンに期待し過ぎて、どんなことでもいい話が聞けたと感じるバイアスがあったとは思う)。

帰路、車で移動しながら、話したことを思い出した。

同席者、妻と一緒に聞くべきだったな、とまず思った。次に、化学放射線療法にしようと決めた。理由は次の通り。

  • 再発する人は再発する。するなら一年以内。
  • 私が一年以内に再発する可能性はある。脈管侵襲ly3だからもう転移しているかも。
  • それなら残りの時間を食道がない状態で生活するよりも、うまいものを食べて生きよう。
  • だから、化学放射線療法にしよう。

決めた。素人の判断だ。そしてセカンドオピニオンの話が大きく影響している。しかし、これ以上、考えてもきりがない。あとは、今、世話になっている大学病院の放射線の医師と話をしてみて、相性が合うか否かだと考えた。この医師に命を預けられるかどうか、ということだ。抗がん剤は、消化器内科の主治医がやってくれる。

これらの結果・自分の決定を、妻にも連絡し、一日は終わった。

いや、この日から始まったのだった。

今、思えば

セカンドオピニオンは、必ず同席者を連れていくこと。これに尽きる。二人以上の方が確実、人によって話の受け止め方が違う、という点からだ。あとは、サードオピニオンなどやめて、セカンドオピニオンを終えて数日以内に結論を自分で出そう、ということだと思う。

主治医が、自分の決断を反対するのであれば、それはそれで納得したなら、主治医の言うようにしたらいい。これも最後は自分で決めること。他人に決めてもらって、後悔することほど悲しいものはない。

その後、放射線療法の影響で甲状腺機能を失ったり、生涯続くであろう耳鳴りになったり、新たに肺に腫瘍が見つかったりと、紆余曲折しているが、今も私は後悔していない。