がん告知後や手術前など、人間は想像できないこと・想像していなかったことがあると不安を覚え、心が落ち着きません。そんなときに備えて、少なくとも2つくらいは自分自身で心を落ち着かせる方法を体得しておきたいもの。ここでは、私がやっている方法を3つ紹介します。メタ認知・コーピング、そして5分後のことだけ決める、です。
自分自身を客観視する:メタ認知
まず次の6つのステップをイメージしてください。簡単です。
- 今、あなたは、自分の部屋のデスクに一人でいます。
- 椅子に座ったあなたを、もうひとりのあなたが背中から見ているようにイメージしてください。自分のうしろ姿を見る感じで。
- 次に、自分自身のうしろ姿を見ているもうひとりのあなたは、だんだんと浮き上がっていって、部屋の天井くらいから、あなたの背中を見ているようにイメージしてください。
- そこで、頭の中で、あるいは口に出してその客観的な状況・事実を言います。「あぁ、私はデスクにあるパソコンでがんについて調べているなぁ」など。
- 次に、頭の中で、あるいは口に出して自分自身の感情を言います。「あぁ、焦っているな私」「必死だなぁ私」という感じです。
- 次に、「でもまだ、もう一人の自分が冷静に後姿を見ている。まだ落ち着いているぞ私は」という感じに、自分を誉める・評価します。
このように、高いところから自分自身を見つめます。そして、どんな状況か、どんな感情を持っているかを、高いところから見ているもうひとりのあなたが言います。
本当に焦っているとき、本当に夢中なときは、自分を客観視などできません。しかし、どこかの瞬間でふと我に返るときがあるはず。そんなときに、自分自身の背中を見つめているもう一人の自分をイメージする。
次に、「ミスが続いているな。落ち着けお前」「焦っているようだが、もう一人の自分はまだ落ち着いているぞ」と声に出して言う。焦ってどうしようもないときに「焦っているなぁお前、ちょっと立ち上がって深呼吸でもしてみたら」と頭の中で言う。日ごろからイメージトレーニングしておけば、できます。
冷静になっている自分がもう一人いると、安心するもの
単純に、自分自身を高いところから客観的に見て、具体的な状況と今この瞬間の感情を解説する。私の場合、これだけで冷静になっている自分がいる・メタ認知できている自分がいる・無我夢中にはなっていない、と意識できて、まだ落ち着いているなと感じます。そこから無理に自分自身をコントロールしようとせずに、「冷静になっている自分がもう一人いると安心する」と自覚するだけです。
私は、このやり方をかかりつけ医から教えてもらいました。これをメタ認知やセルフモニタリングなどと言うようですが、ネットで調べるとなぜかどこも似たような難しい説明でわかりにくい。ここまで書いていることは専門的には少し違うのかもしれませんが、私はこんな感じで告知されたあとも、大きなパニックや何も手がつかない状態にはならずでした。
一度、いや今この瞬間にでも、試してみてください。
コーピング
これも、日ごろの準備が大切です。
例えば、日常生活で、ちょっと休憩するときに何をしますか。ある人はコーヒーを飲む、ある人は付近を少しだけ散歩する、など。人それぞれ、こうすればリラックスできる、といったものがあるはずです。
すぐにできることを紙に書いて目に付きやすいところに貼っておく
これをやれば自分はリラックスできる、というものを書き出して、どんなときにでもすぐに見えるようにしておくだけです。コツは、自分にとってすぐにできることを書き出すこと。「海外旅行に行く」など、それはそれでリラックスできても、ちょっと休憩するときにできるものではありません。
私の場合、こんな感じです。
- 思い切り鼻から4秒間、息を吸う。7秒間、息を止める。その後、8秒間、息をゆっくりと吐いていく(ハーバード式呼吸法というらしい・MRI検査が始まるときはいつもこれをやって心を落ち着かせています)。
- 家族旅行での子供たちの笑顔を思い出す(目に付くところに子供たちの写真を置いています)。
- 頭皮をマッサージする(手のひらで、頭の両側から頭皮をぐるぐると回す)
- 上述のメタ認知(これをやってもダメなときはダメとあきらめています)。
「コーピング」や「ストレスコーピング」でウェブ検索すると専門的なことばかり書かれているので、「コーピング リスト 作り方」で検索してみてください。以下、参考になるサイトです。
参考サイト
5分後のことだけを決めて、それだけをやり続ける
これは頭の整理がつかないときに「5分後にすることだけを考え、それを決めて、それをやるだけ」です。
焦っているとき、疲れているとき、落ち着きがないとき、一日の予定など立てられません。もちろん一週間の予定など論外。
そんなときに、5分後に何をするかだけを考えて決める。そして、5分後に実際に決めたことをやり終える。やり終えそうな時にまた次の5分に何をするかを決める。そんな感じで連続していくと、慣れていれば自然に半日くらいは経過します。
コツは「とっかかり」を始めること
5分後に何を決めて、何をやればいいか。
私の場合はやるべきことの「とっかかりを決めて、それをやる」ことにしています。例えば、今日一日で30ページを読まなければならない本があれば、「5分後に1ページだけ読む」と決めます。提出しなければならない書類があれば、「5分後に書類の最もとっつきやすい部分を探す」と決めます。
そして、実際に、始めます。
最後までやらないで、次回に残しておくと、次から始めやすい
こうすることで、物事のとっかかり部分だけは着手したことになります。気持ちが乗れば、そのまま進めればいいのです。ただ、集中力が途切れるまではやらずに次の機会まで残しておきます。そうすることで、次に始めるときに、「既にやりかけている」ので、スタートがかなり楽になります。
どんなことも「助走」が必要です。自転車は「漕ぎ始めが大変」、物事は「やり始めるまでが大変」とはよくいうことです。「やり始めて、疲れる前に終わっておく」ことで、上述のように次のスタートは本当に楽になります。
このような考え方で次の5分に何をするかを決めておくと、慣れればうまく一日が終わるはずです。
以上、ここまで3つの私なりの方法を紹介しました。少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
がん患者になるより前でも、 今からできること!
- 自分なりの心を落ち着かせる方法を3つ程度は決めて、日ごろからイメージしておく。